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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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アレックルートED後、アレックとコリンにインタビューする記者



 その小隊には、二人のエースが存在する。
 大陸大戦にて大きな戦果を上げつつも、存在のみが知られ名は広まらなかったアレック・ユーティライネン。そして第二次大戦勃発の危機であったロランド事変にて一躍その名を知らしめたコリン・グレイディーアである。
「是非とも、新旧両雄、お二方の話をお聞きしたく参上しました!」
 緊張と興奮が入り交じった様子の若い新聞記者にアレックは苦笑する。二年の歳月を経て戻ってきた古巣に大きな変化はなかったが、自身を取り巻く状況はだいぶ変わってしまった。これらはすべて次期国王の思惑の内なのだから彼としては文句を言いたくても言えないし、『相応に頼みますよ』という空耳すら聞こえてきそうだ。
「大変、光栄に思います。しかし、申し訳ないのですがグレイディーア中尉は少々遅れておりまして、ひとまず私がお相手を」
 自身も飛行機に憧れを持つという記者にとって、この取材の半分は趣味なのかもしれない。そう思わせるほどに目を輝かせながら、ではさっそく、と彼は切り出す。
「貴方は、大陸大戦において我が国で最も優れたパイロットであった。エース……敵を五機以上落としたパイロットに与えられる称号だそうですが、貴方は五機どころではなく、大陸一と謳われたグリュンフォイエルに匹敵する数の敵を墜としたと?」
「ええ、そうです」
「素晴らしい! 貴方の力がこの国を護った!」
「いえ、違います」
 恐らく記者としては、ここで自信に満ちた返答や謙遜しつつも微笑む姿を期待していたのだろう。不満と疑念と純粋な不思議さが入り交じり奇妙な表情になった彼に、アレックは静かに続ける。
「パイロットは、一人で戦っているわけではありません。私たちが空へと飛び立つためには多くの準備が必要です。そして飛行機を常に飛べる状態に保つのにも、莫大な労力が費やされています」
 記者が話についてきているかを確認するように、アレックはそこでいったん言葉を切った。相手は眉根にしわを刻みつつ、手にしたメモにペンを走らせている。ひとまず発言を書き留めることに集中したのだろう。それはそれでいい、必要がないと切り捨てられてはいないのだから。そう思うアレックに記者は目で先を促す。
「……私たちは、その支えなくしてはなにもできない。そして支えてくれる多くの人々に、私は私の全力で応えたい。敵を墜とすことがそれではないのです。生きて帰ることが、可能な限り最善の行為。だから私は一人で戦っているわけではない」
 それに、と何事かを口にしつつアレックが笑う。そこにある僅かな変化に果たして記者が気付いたのかはわからない。が、開けっ放しだったドアからするりと入り込んできたもうひとりのエースの目には、揺らぐ炎のようにはっきりと立ち上ったそれがわかった。
「そうなんです」
 わわっ、と驚きの声を上げたのは記者で、アレックはコリンに視線を向けて片手を上げた。それに同じく手を挙げて応えてから、コリンはにんまりと笑って、くるりと返した手の指を立て記者に向かい気障に振ってみせる。
「なにしろ准尉殿を空へ送り出しているのは、彼の女神なのですからね」
「女神?」
「恋人、ですよ。我が小隊自慢の女性整備士です」
「な、なんですって?」
 まるで作ったように出来すぎた、その上に読者の食いつきが良さそうな話に、先ほどまでとは別の意味で記者の目が光った。早速コリンに向かい女神についての質問攻勢に入った彼に苦笑しつつ、アレックは心でコリンに、もうひとりのエースに感謝を捧げ、そして先ほど口にしかけた言葉を再び想う。
 あの場所には、同じ世界を廻る『戦友』たちが、いる。
 

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