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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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風色サーフ SS
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本編第三章後くらい、コリンとオズウェル



 ロビュ小隊のエンブレムのモデルとなった二羽のワタリガラス、その名はフギンとムニンという。ユクトランドを含む大陸北部に伝わる神話に由来するその意味が、「思考」と「記憶」であることは広く知られていた。そして、彼らが仕えるはかの神話における主神―死と戦いを司りながらも知識を渇望する存在である。
「つまりだ。見たものを記憶し、それに基づいて思考することこそが自身ってのを保つんだろうな」
 空を舞う黒い二羽を見上げながらコリンがそう言う。が、そのすぐ傍でオオルリの整備をしているオズウェルは、それが自分に向けられたものだということはわかっていたが―なにしろ周囲には他に人間がいない―返答をするのは避けたいと本気で思っていた。
 オズウェルはこの男の、時折こういう益体もないことを言うところが苦手だ。そしてそれ以上に腹立たしいのが、
「だからぁ、オズウェル君はエリカちゃんに優しくできないわけか。おお、可哀想にっ!」
「……うるさい。単にする必要がないからだ」
 こうして返事をせざるを得ない、しかし下らないことを突きつけて来る部分だ。
「はは! なあオズウェル、人間ってのはな、大抵都合のいいことしか覚えてないんだ」
 不機嫌さを隠さないオズウェルの返答にコリンは声を上げて笑った。そして続いた台詞に、視線はオオルリの機体に向けたままのオズウェルの眉根がますます歪む。
 それが正しいのならば、今の自分を作り上げた多くの記憶はなんのために存在するというのだ。
 半ば八つ当たりに近いそれを口に出してしまうほど、オズウェルは子どもではない。しかし、パイロットして鍛え上げたものなのか生来のものなのか……恐らくはその両方であろうコリンの洞察力は、その程度、簡単に見抜いてしまう。
「お前がどんな理由で『そう』なってるのか知らないが、もうちょっとばかり世界を広げてもいいんじゃないか?」
 だから、まったくしかたないなと彼はもう少しだけ、この拗ねてばかりの駄々っ子に歩み寄る。いつの日か動き出すだろう、錆び付いた記憶のために。
「せっかく懐かれてるんだしな、あいつらに。その視線をちょっと下ろすだけでいい」
「……は?」
 うっかり顔を上げてしまったオズウェルだが、コリンはすでにきびすを返し離水桟橋を地上に向かって引き返していく。上げた片手がひらひらと振られたのは、別れの挨拶の代わりなのか。
 まさか知ってるのか、あの男ならあり得るが、などと思わされてしまう辺りもまた腹立たしく、オズウェルはがりがりと頭をかき整備に集中すべく再び目の前の青い機体に視線を戻した。
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