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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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九龍妖魔学園紀 SS
1st。葉佩のやっちー第一印象。
 皆、静かに。
 そう告げる担任教師の声は教室によく通り、葉佩の耳にも優しく響いた。
「今日から皆と一緒にこの天香学園で学ぶことになった、転校生の葉佩九龍くんです。葉佩くんは……」
 担任が話を続けている間にも、好奇心に満ち溢れた多くの目が葉佩の全身を品定めするように見ている、それに不快さは感じない。遺跡に潜んでいる≪人でないなにか≫の視線のほうがよほど生々しい。これらのものは、生気に満ち満ちている分、心地よくさえある。自分もまた生きているのだと感じさせてくれるから。
「葉佩九龍です。日本に戻ってきたのも、日本の学校に通うのも久しぶりなので迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」
 促され、差しさわりのない、そう『設定された』自己紹介をして頭を下げた。それだけでも、教室の空気が一気に変わるのがわかる。なんとも、新鮮というか、経験のない奇妙な感覚だ。どう反応していいのかわからず、そんな自分に対して思わずふっと笑ったのをどう取ったのか、担任―雛川亜柚子が葉佩の顔を覗き込むようにしてくる。
「葉佩くん、そんな顔をしないで? 皆で楽しい学園生活を送っていきましょう?」
「あ、大丈夫です。ちょっと緊張してまして」
 それは別にまったく嘘というわけではない。ロゼッタ協会でのことを除けば、こんなにたくさんの見知らぬ人間と関わるなんて久しぶりで、らしくもなく体が硬くなっている。遺跡ではこんなことはない。それはこの身で知っているからだ、遺跡で緊張なんてしていたら命取りだと。
「いいのよ。最初は誰だって緊張するものね。お互い、卒業までがんばっていきましょうね」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃ、葉佩くんの席は……」
「ハイッ、ハイッ!!」
 待ってましたとばかりに教室に響き渡る声に、葉佩は一瞬、面食らう。
「あたしの隣が空いてま~す!」
 一番後ろの席で立ち上がった少女がその発生源だった。お団子頭をした、見るからに元気のよさそうなその生徒はピッと腕を中空に伸ばしている。一方から言えば積極的、もう一方から言えば空気を読んでいない行動とも取れそうなそれに、葉佩はやや戸惑う。
 しかし、あら、と雛川が微笑んだところを見ると、彼女のこういった行動はよくあることらしい。周りの生徒たちも明るい笑顔でその行動を容認している。なるほど彼女はここにおいてそういう立場か、葉佩は『なにも知らない転校生』らしい驚いた表情のまま、しかしその内面ではすでに冷静にそんな判断を下していた。―これは手間が省けたかもしれない。
 潜入の際、その母体となる組織、この場合はこの3-Cというクラスで力のある、もしくは彼女のように皆に対して悪意のない影響力のある人物とつながりを作ることはひとつの必須事項だ。
「それじゃ、葉佩くん。八千穂さんの隣に。なにかわからないことがあったら、八千穂さんに聞くといいわ」
「はい、わかりました」
 もう一度、誰ともなしに頭を下げてから示された席に向かう。その間も、その八千穂という女生徒は葉佩のことをニコニコと見守っていて、その純粋で好奇心に満ちた瞳に葉佩は唐突に思った。
 なんだか少し厄介なことになりそうだな、と。
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