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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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 ACE6小ネタ。
 連作には絡んでる感じで、ラナーさんと基地の人々のおしゃべりDE話題はゴーストアイ、みたいな。勢いで書いてるので細かいところはご容赦。捏造もすごいよ!

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 個人のことなんて誰にもわからないし、自身が作り上げている仮面こそが評価対象になっていることが常だ。しかし、エレオノラ“ラナー”バレーカは、最近自身に向けられている評価が思わぬものになっていることに若干の戸惑いを覚えていたりする。
 だからというわけでは、ないが。
 休憩のために入ってきたレストルーム、そこにある机の一角を占拠している女性達の様子が気になって、しかし一瞬、声を掛けようか躊躇ってしまった。
 この行為もまた、後になって同僚達に「やっぱり世話焼きになったわ、お前」と言われる要因になるのだろうか? いや別に元々他人に関心が無かったとかそんなキャラでもないのだが、どうもタリズマンという年下の、色々な意味で今まで接したことがなかったタイプである友人ができてからこうする癖がついてしまった気がする。重ねて言うが別に嫌ではないのだか……さすがにスカイキッドに「ラナーって意外とオカン気質だったんだ」と言われてしまうと、色々思うところもあるわけで。
「……どうかしたの?」
 数秒後、余計な思いを振り切ってかけたその声に振り返り、安堵した表情を浮かべたのはラナーも顔見知りの若い事務の女性だ。他の皆は見覚えがない顔ばかりで、端的に言えば恐らく全員が新人、それもパイロットであるラナーとは直接的な関わりの無い部署の人間なのだろう。人の顔を覚えるのにはわりと自信がある。
 そして、そんなラナーに比べれば様々な経験の浅いだろう彼女たちがそろって顔をつきあわせているのだから、先輩としては気にしても当たり前だ。……なんて、これは誰に言い訳しているのだろう。
「あ、あの、実は」
 そんなラナーの心中など知らぬまま、相手はすっとテーブルの上にある物へと目をやる。つられてラナーも同じほうを見て、そこにあるものを視界に収めた。
 机の真ん中、ちょうど全員から均等のところに置かれているのは底の浅い紙箱だ。ぱっと見て宅配のピザなどを連想させるが、それは派手な模様も店名の印刷もない白一色。となるとなんだろうと考える間もなく、椅子から腰を浮かせた一人がかさかさと箱を開く。
「あら、美味しそう」
 顔を覗かせたのは、思わずそんな声が漏れてしまうほどの、つやのあるこんがりした焼き目をしているパイだ。ハンドメイドなのだろうか、やや形は不格好だが漂ってくる甘い匂いも食欲をそそる。どうやらアップルパイのようだ。
 しかし、休憩の席にこんなものが差し入れられたのなら場も多いに盛り上がるはずだろうに、なぜ彼女たちは飲み物の用意もしないで困った顔を並べているのだろう? 不思議そうな顔になったラナーが話を促すように相手を見て、
「これは? 誰かが作ったの? これから味見?」
「いえ、これは頂き物で。……少佐が下さったんです」
 彼女は眉を寄せて、しかも後ろ半分は周囲に憚るかのように潜めた声で告げる。それに、ああ、とラナーは思わず苦笑した。
「なるほど。ゴーストアイがくれたのね」
 パイロットであるラナーに向かい『少佐』と称すのなら、まず間違いなく彼のことだ。案の定、はい、とまた身を縮れ込ませるようにして頷く彼女の肩をポンと叩く。力を抜けと、そういう意味を込めて。
「大丈夫よ、他意なんてないから遠慮なく食べてあげて。でないと捨てられるか、味もへったくれもない男どもに食い荒らされるだけだわ」
「そう……なんですか?」
 明らかに理解が追いついていない、気の抜けた声を出すしかない彼女の気持ちはラナーにもわかる。というよりも、昔、まったく同じ思いをしたことがあるのだ。あの厳つい男の趣味が料理、のくせに食べてもらう相手に不足しているらしく作ったお菓子を基地に持ち込んで同僚や部下に配っているなんて、まったく作り話としか思えないものだった。実際に本人から手渡されたときの衝撃は未だに覚えているし、なにかこの贈呈品に妙な意味があるのではないかと勘ぐって、なかなか手を出す気になれなったのも無理はない、と思いたい。
「むしろ、処分に困ってるのを助けてあげるくらいの気持ちでいいわよ? 彼、趣味は作るのだけだから、後のことを考えてなくて困るのよね」
 趣味なんですか、と何人かは目を白黒させてしまっているし、なんだか、こうして新人に事実を伝えていくのも一種の伝統になりつつあるのかな、そう思えばなんとも言えないむず痒さすらこみ上げてくる。しかしそれは、決して不快なものではない。
 先輩であるラナーの言葉に安心したのか、ずいぶんと表情の緩くなった彼女たちはパイに向き直ってどう分けようかと相談を始めた。パイそのものは素人の男性の手によるものとは思えないくらいに美味しそうなのだ、彼女たちだって事情を抜きすればすぐにでもお茶の時間といきたかったのだろうことは、自然に上がるはしゃいだ声から窺える。さて、この光景をゴーストアイが見たらどんな反応をするのか、いや、彼の目的はここにはないのだから必然的に見ることもないのだろう。
 ご一緒にどうですか、と言う誘いを断って立ち去ろうとしたラナーに、
「あの、すみません」
 もう一度声が掛けてきたのは、さっきの顔見知りではなく事務系らしいおしとやかな雰囲気の女性だった。なにかしら、と足を止めたラナーに向かい、
「少佐に、お礼を言っても大丈夫でしょうか?」
 ひどく言いにくそうに問いかけてくる彼女の瞳には、しかし、生真面目な決意が見え隠れしている。
 彼は喜ばれることを前提にしてないから、さぞかし驚くかもしれない。が、それはそれで見物だろう。想像するだけで微笑みが零れる光景と、それを取り巻く彼女の同僚達のからかいもはっきり浮かんできて、ラナーはくすりと笑いながら頷く。
「もちろんよ。ちゃんと味の評価もしてあげるといいんじゃないかしら」
 やっぱり少し世話焼きになっているのかもしれないな、と自分でも思ったのは、忘れておくことにしよう。
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