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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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 カッとなって1時間ほどで書いたACE6小ネタ。
 連作とはまったく関連性はないです。ゴーストアイが意外に料理が好きだったら…という方向についての備忘録的な小ネタ。ゴーストアイとタリズマンが戦友以上恋愛未満みたいな雰囲気。勢いで書いてるので細かいところはご容赦。

拍手、ありがとうございます。
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 世間一般の常識、あるいは風潮と言うべきか、とにかくそういう実体のない空気に当てはめれば、“ゴーストアイ”のような大柄で厳つい男性が料理に勤しむのはなかなかないことらしい。むしろタリズマンにとっては、意外すぎて冗談かと笑うこともできないほどの驚きだったようだ。
「だってさ、まずゴーストアイに合うサイズのエプロンってあるの?」
 その質問もだいぶ的外れじゃないかなぁと笑ったのは彼女の相棒だが、そのシャムロックは今、めずらしく隣にいなかった。空軍きってのエースパイロットと管制官が一対一で向き合っているというのにちっともそうは見えないのは、そのエースが夢中になってパイを―しかも明らかに手製であるとわかる品を頬張っていることと、管制官が落ち着きなさげにその様子を見守っていることに主な原因があった。
 一切れ目を口に収め終え、ようやくタリズマンが人心地着いたといった様子で目の前に意識を向ける。そしてかくりと首を傾けながら満足げに、
「うん、美味しいよ」
「……それはよかった」
 いつも通りの簡潔な返答だが、その端々に本気の安堵が僅かに見え隠れしているのに気がつけたのは、その場に何人いたのだろうか。あいにくとタリズマンもそれに気がつけるほど彼と友好を深めているわけではなく、だから、慌てて二切れ目に手を伸ばす。お世辞だと流して欲しくないという想いを言外に込めて。
「もっと食べてもいい?」
「構わない」
 そう言いながらも、ゴーストアイは伸ばされたタリズマンの手を制する。いぶかしげな彼女に構わず、ひょいと皿を取ったゴーストアイが手早く次の一切れを乗せてコトリと彼女の前に置き直した。それが当然と言わんばかりのゴーストアイの態度に、タリズマンの表情が妙に嬉しそうなものに変わり、
「ありがとうございます、少佐」
 ニコニコと機嫌が良いのは、きっとおやつを前にした子どもと同じ理由だ。そう思い込もうしているのか、それが本心なのか、すでに自身の心情が分からなくなっていることに目をつぶっておこう。そんな風に考えるゴーストアイだが無論、態度には少しも出ることはない。
「でも、なんで急に、食べるか、なんて言い出したわけ?」
「……こういった物を提供するのならば女性が妥当かと、そう判断した」
 やや歯切れの悪い台詞に、そういう意味じゃないって、と続けたいのをタリズマンは必死に飲み込む。根が包み隠さない性分の彼女にとっては最大限の努力を必要とする、そしてそれだけのことをつぎ込むに値するものだったのだ、その言葉は。言った本人は、絶対に気がついてないだろうけど。
「じゃあ、いつもあげてる人がいるんだ」
「さて、どうだったか」
 ゴーストアイはゆるりと窓の外に視線をやって独り言のように呟く。その先に浮かんでいるのは思い出なのか悔恨なのか、それはタリズマンにはわからないことであり……それが少しだけ悔しいと思うのは、きっと気のせいではない。
「恐らく目的は結果ではなく、過程だ。料理ならば、材料を揃えて正しい手順を踏めば間違いのない物ができる」
 その言葉をタリズマンが受け取り含まれる意味が咀嚼される前に、ゴーストアイは席を立った。なにか飲み物を持ってくる、と言い残して歩き出そうとする彼の背に向かい、タリズマンは腰を浮かせつつ、あのさ、と呼び止める。
「本当に美味しいよ、これ。全部食べてもいいくらい」
 別にそのまま何処かに行ってしまうわけでもないし少し待てば戻ってくるとわかっているはずなのに、この一瞬にこれほどに懸命になる彼女にゴーストアイはふと思う。次は、目的のために過程を楽しんでみるのもよいかもしれない、と。

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