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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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 連作に絡んでる感じの小ネタ創作文。
 ラナーから見たガルーダについての小ネタDEあるとかないとか(なにがかはお察しください)。妄想満載なのはいつものことです。ほのぼの9割シリアス1割って感じ。勢いで書いてるので細かいところはご容赦。時間軸的にはセルムナ連峰戦前くらいかなと。

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「おはよ、シャムロック」
「やあ、おはようタリズマン」
 朝の食堂に響くものとしてはごく普通の挨拶、交わしあっているのも同じチームの者同士で、取り立てて注意を払うべきものでもなかった。が、一部の、まだその光景に見慣れていない人間がぎょっとした顔になる。
「もう食べ終わった?」
「今日のスクランブルエッグは苦いから避けたほうが良いぞ」
「あらら、焦がしちゃったか。オッケー、ありがと」
「ついでに僕にコーヒーをもう一杯持って来てくれないかな、相棒?」
 了解と笑って、するりとタリズマンがシャムロックの首に回していた腕を解いてその背から離れる。つまりタリズマンが座っているシャムロックを後ろから覗き込む格好だったわけで、体格差がある分、まるで背後から抱きついているようにも見たりもする。なにしろタリズマンは女性でシャムロックは男性なのだから。
 朝からそんなものを見たらぎょっともするわよね、と未だに固まっている彼らに同情するのは、そのタリズマンと一緒に食堂に入てきたラナーだ。
 彼女の同室者にして唯一の同性パイロットは、そういったところがどうにも子どもっぽかった。その言動を2,3日見せた後で年齢が25と聞いて信じる人間がいるだろうかと思えるほどなのだが、特にシャムロックに対しては遠慮が一切無い。先ほどのように挨拶代わりのスキンシップひとつ取っても、タリズマンの中では相手が異性であるよりも僚機であること、『相棒』であることが明らかに優先されていて……ラナーの語彙の中でもっとも相応しい言葉を使えば、シャムロックに懐いているのだ。
「……ねえ、タリズマン。それにシャムロックも」
「ん?」
 いつものようにシャムロックの隣に座ったタリズマンの向かいで朝食を済ませ、食後のコーヒーのカップをテーブルに置いたラナーが切り出す。それにまだサンドイッチを口に運んでいるタリズマンが首を傾げ、シャムロックも彼女に注目した。
「なんだ?」
「思うのだけど、貴方たち、もうちょっと周りの目を気にしたほうがいいわ」
「……すまないラナー、意味が分からないんだが」
「ああ、私の飛び方のこと?」
「違うわよ。確かに貴方の飛び方もそうと言えばそうだけれど、そちらはシャムロックに任せる」
 じゃあなんだ、と顔を見合わせる二人に、本当に分かってないのね、とラナーはなんとも言えない気持ちになる。どうやらシャムロックにとっても、懐く子犬にじゃれつかれている程度らしい。
「だから、さっきのようなあれよ」
「あれ? 私、なにかしたっけ?」
「朝の挨拶、していたわよね」
「それがどうかしたのか?」
「じゃあ、同じことを私がしたらどうなのかしらね、シャムロック?」
 不毛な問答にうっかり頬を引きつらせた笑顔でそう言ったラナーに、シャムロックが、え、と気圧された様子で思わず身を引いた。そして、言われたとおりに脳内でシミュレーションをして、
「あっ!」
「ようやく分かってくれた?」
「え、なに?」
 話について行けなくなったタリズマンがシャムロックのほうに身を乗り出す。と、そのタリズマンの顔ではなく、別の部分を見そうになって慌ててラナーのほうを見た。
「べ、別にやましい気持ちはない。その……感触もないし気がつかなかったんだ」
「はい? 感触?」
「……シャムロック?」
「うっ、いや……」
 首を捻ったタリズマンに、なんの、とはさすがに言えないシャムロックが更にうろたえる。ますます不思議そうな顔をしたタリズマンが、シャムロックに対しジト目で冷たい視線を送るラナーを見て、あ、という顔になり、そして一度目線を落とした。
「えーっと、うん、わかった。確かに感触ないだろうね」
 うんうん、と頷くタリズマンは対してショックを受けた様子もない。どうやら、そのあたりの有無は気にしていないらしい。それを意外に思ったのはシャムロックもラナーも同じで、そんなふたりの様子にタリズマンはけろりとした顔で、
「別に、なくてもいいって私は思ってるけど。パイロットに必要なものじゃないし。逆に、表面積が少ない分、空気抵抗少なくなっていいんじゃないかな」
 などとトンチンカンなことを言い出したタリズマンに、そういう判断でいいのかしら、と今度はラナーが首を捻ってしまう。タリズマンは時に……主に空において常人では計り知れない判断を下す思考回路の持ち主だが、こういうところでも発揮されるものらしい。しかし僚機としてそれに付き合い続けてきたシャムロックはすっかり慣れているのか、ラナーとは違ってむしろいつもの調子が戻ってきたようで微かに笑って言う。
「まあ空気抵抗はともかく、女性の魅力はそれだけで判断されるものじゃないからな」
「………………」
「でも確かに、少し考えてくれよ、タリズマン」
「りょーかい。気をつける」
 そういう台詞を本人の前で言うか、とツッコミを入れたいラナーだが、つまりそれはあくまでタリズマンに向けられた言葉なのだ。さらに、要は自身を異性と見なしていないと暗に言われているも同然なそれに気がつかないタリズマンも、きっとまた明日になればいつものように挨拶をするのだろう。なぜなら、彼らにとってはそれが最も自然なのだから。自身の徒労を知ったラナーはカップに残っていた冷めかけのコーヒーを口に運び、ため息をなんとか押さえ込む。
 でもまあ、そんな二人の様子は決してマイナスというわけではないと、ラナーは知っている。こんな戦時を平時として生きる状況にあるからこそ、微笑ましい懐き懐かれな姿に『日常』を見出し心の安らぎを得ている者たちがいることも。親子のような関わり合いに、守るべきものと戦う理由を重ねて心を奮い立たせている者たちがいることも。
「……私も、かしらね」
 その心に、グレースメリアに残してきた自身の『戦う理由』を思い描いたラナーの呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。

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