忍者ブログ
ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
16
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 連作に絡んでるような絡んでないような小ネタ創作文。
 ウチのタリズマンは動物で言うと犬だよなビーグルかなーっていうかシャムロックも犬だよなーゴールデンレトリバーだよなー、ウチのガルーダは端から見ると嬉しそうにじゃれてくる小型犬をなんだかんだで相手してる大型犬だよなーというアホいとこから出発したのに、なんとなくシリアス混じってしまった変な文章。勢いで書き殴ったので細かいところはご容赦。時間軸的にはケセド島駐留中かなー、とか。


--------------------------------------------------------------------------

「なにやってるんだ、タリズマン?」
「うわっ!」
「え?」
 予想外の大きな反応に、声をかけたほうのシャムロックも驚く。確かに背後からだったので驚いてもおかしくはないのだが、だとしてもいやに大げさだ。なにをそんなに、と首を捻ったシャムロックに、座ったまま決まり悪そうに振り返ったタリズマンが口を開く前、わん、と予想外にすぎる鳴き声がして彼は目を丸くする。
「どうしたんだ、その子は」
 あはは、とごまかし笑いをしたタリズマンのあぐらをかいた膝には、一匹の小型犬がちょこんと収まっていた。シャムロックはあいにくと犬種には詳しくなくそれがなんという品種なのかはよくわからないのだが、くるんとした瞳が見上げてくる様は実に愛くるしい。
「この辺根城にしてる野良犬みたい。普通なら、ジャックラッセルの野良なんてあり得ないだろうけど……まあ、状況が状況だし」
「ジャックラッセル?」
「うん、ジャックラッセルテリア。知らない?」
「ああ、聞いたことはあるな」
 見知らぬ人間に興奮したのか、わんわんと立て続けに吠える犬の頭を、よしよし、とタリズマンが撫でてやる。と、すぐに大人しくなって、いや大人しくなったのは声だけで彼女に大きくじゃれつきはじめた。……この首輪を身につけた人懐こい犬は戦乱で飼い主と離れてしまったのだろう。それが久し振りに思い切り甘えられる相手を見つけ、すっかりはしゃいでいる。事情は別として、そんな微笑ましい様子にシャムロックは思わず頬をゆるめた。
「ずいぶんと懐かれてるじゃないか」
「まあね。私、犬、好きだから。きっとこの子も、そういうのがわかるんだ」
 だよな~、なんて嬉しそうに言いながらジャックラッセルの首の辺りをわしゃわしゃとかき混ぜる手つきもいやに慣れている。これは今日が初めてではないなと見当をつけたシャムロックだったが、そこを問い詰めるのは野暮だろうと流すことにして、その傍らにしゃがみ込んだ。
「僕も触って大丈夫かな?」
「平気平気。この子、良い子だから」
「名前は?」
「え?」
 シャムロックのなんでもない疑問に、なぜかタリズマンがキョトンした顔をする。そして、名前、と呟きながら目をそらした。
「知らないけど、でも、仲良くなれるよ。……大丈夫」



 タリズマンの趣味、トレーニングを兼ねた走り込みのコースに加わった新しい習慣のことは、そのうちにエメリア軍の一部で話題に上るようになっていた。
「わりと和むんだよな、見てると」
 なんて言いながらコーヒーを口にするバードイーターに、レストルームに集まっていた彼の同僚であるスワローテイルが頷く。
「だよな、小犬同士がじゃれ合ってる感じ」
「つまりある種の、アニマルセラピー効果をもたらしているわけだな」
「……さりげなくひどくないか、ふたりとも?」
 タリズマンのことも動物扱いなスワローテイルと冷静かつ真顔で妙な評価を下したセラックに、セイカーが苦笑しながらミネラルウォーターのボトルを揺らした。
「でもまあ、ああいう息抜きっての? それがガルーダのスコア維持の秘訣だったりして」
「どういうことだ?」
「シャムロックもたまに一緒にいるからさ」
 へえ、と感心した声を上げたバードイーターの横で、なぜかスワローテイルが顔を明後日のほうにそらした。それが笑いを隠すためだと気がついたセラックの不思議そうな視線を受けて、彼は、いやさぁ、と堪えきれない分、引きつって見える頬をさらにひくつかせる。
「俺も見たことあんだけど、あれ、なんつーか、シャムロックにでっかいのとちっこいのがじゃれてるって見えるんだよな」
 わずかな間のあと、ぶっと派手に噴きだしたのはバードイーターもセイカーも同じだった。そしてさらに、これまた真面目にセラックがうなずき、
「確かに、タリズマンは動物で言うと犬だな。命令には従うが有り様は自由、ビーグルかシバイヌといったところか」
「そんな分析いらねーから!」
「でも納得しちしまった」
「じゃ、あれだな、姉御は猫だな。シャム猫」
 妙な盛り上がりを見せる彼らの会話は、何気なしに顔を出したウィンドホバーに、『お前らそんなに動物好きだったのか』と突っ込まれるまで続くことになる。



「うーん、来ないなぁ」
 それからさらに数日後、いつもの習慣の途中でタリズマンはそんな呟きを漏らしていた。
 来ないのは、例の犬だ。ここの基地を拠点にしてすぐの頃、走り込みのコースを模索していたときに出会ったジャックラッセルテリア。間違いなく飼い犬だったのだろうしつけの良さと賢さゆえに弁えているのか、あくまでタリズマンのことを庇護者ではなく遊び相手として―まさに『突然やって来たよそ者と遊んでやっている』だったのかもしれないが―認識していた彼は、ここで待っていることもあったし休憩しているうちに現れることもあった。しかし、弾んだ息がすっかり収まってしまうまで姿を見せなかったことなど、いままでなかったのだ。
「もしかして……」
 こっちが、この基地を離れるのがわかったんだろうか?
 タリズマンはそう心で呟いた。ガルーダ隊を含めた戦闘飛行隊は、明日にでも拠点を移すことになっている。その準備の騒ぎで、あのジャックラッセルも気がついたのかもしれない、自分がまたひとりになってしまうことに。それで、裏切られたと思って、こないのか。それとも別れがつらいから来ないのか。彼は賢いから、未練になってしまうことを心配してくれたのか。
「そんなわけ、ないか」
 きっと、そのどれにも当てはまらない。単純に本能から警戒して、頻繁に動きのある基地に近付かなくなっているだけだろう。つまりこれはすべて自分の感傷にすぎないのだとタリズマンは首を振る。
「……ごめんな。多分そういうの苦手なんだ、私」
 額の冷えた汗を拭いながら相手のいない言い訳となにかを残して、彼女は立ち上がる。
「またね、さよなら」


PR
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Copyright c イ ク ヨ ギ All Rights Reserved
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ[PR]