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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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風色サーフ
雰囲気系の超短編集
※悲恋系ネタあり



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●ゲーム開始前、未来がまだ決まってない頃

「ヤタガラス?」
 ようやく発音できた、という感じのたどたどしいそれにナカジマは酒で枯れた笑い声を上げる。
「そう、八咫烏さ。フギンとムニンは、まあ、それによく似てらぁ」
 機嫌の良いその口ぶりに、なんと言えばいいのかとアレックは首を捻る。
 アレックは、実はあまり飲めるほうではない。しかし飲み会の雰囲気は嫌いではなく、こうして酒好きのナカジマに付き合うのは苦ではなかった。世界を廻ったという彼の蘊蓄は聞いていてタメになるものが多いし、アレックの過去を知っているという点においても気楽につきあえるのだ。……なんとも後ろ向きな理由ではあるが。
「ええと、親方? つまりジパングの鳥なんですか?」
「ちっと違ぇな、神鳥さ。熊野に祭られてんだったかなぁ」
 またもや聞き慣れない単語が出てきたがこの際聞き流すことにし、アレックは肩をすくめて続けた。
「その、ヤタガラス、ですか? ロビュのエンブレムに通じると」
「あれはイイ紋章だぁな。戦士を導く神の使いさ」
 ナカジマは故郷を非常に愛している。それは、こう言ったときによく引き合いに出す故事になどに現れていた。空を飛ぶという行為、飛行機に理解がないがゆえに飛び出さざるを得なかったその地を、いまでも愛おしく思っている姿は、決して不快なものではない。
 そうだ。想いとは、常に地に残るものだ。
「フギンとムニンも神に仕える鳥がモチーフですね。国旗にある槍を持つ神に、だったかな」
「へえ、国旗云々は初耳だな」
 ナカジマの酒気に当てられたか、アレックの言葉もどこか模糊としたものになる。まあ、酒の席の話など、与太も良いところだ、そもそもが。
 だから。
(俺も、鳥でも描いておくべきだったかな)
 なんて、本当に無味乾燥な自嘲が脳を過ぎったりなどするのだ。

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●ヨハンBAD後

 はあ、とため息をついた弟―ケネスにコリンはへらりと笑った。いや、正確に言えば笑う以外にすべきことを思いつかなかったのだ。
「兄さん、自分がしでかしたことがなんなのかわかってるんだろうな」
「もちろん。銃殺ものだろうな。別に、ほっといてくれていいんだぞ? グレイディーアの面汚しを」
「ああ、是非ともそうしたいところだ」
 ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜて、ケネスはもう一度わざとらしくため息を吐く。自分の兄の性格はよく知っている。だからこそ、彼がどこまでも本気であることもわかっている。まあ、そもそも彼を助ける方法など、この世に存在しないが。
「……死ぬのが怖くないのか?」
「怖くはない、ただ残念で仕方ないな」
 ざらりとその手首を縛る金属を弟に見せて、コリンはらしくもなく酷薄な表情を浮かべる。
「繋がれた鳥は飛べない、空で死ななかったパイロットなんてお話にもならない」
 つまり、かのグリュンフォイエルも、お話にならないパイロットだったんだよ。かくもその程度の、下らない結末がコレなんだ。
 そう心で吐き捨ててから、コリンはもう一度笑った。
 あと数日もすればきっとまた彼女に、そして奴にも会える。その時になんと祝福してやろうかなんて考えるのは、夢見がちにすぎるだろうか。

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●コリンBAD後

「兵士は命令に従う生き物だ。政に関わるべからず、信念は持つべからず」
 コツコツとテーブルを叩く指は白く美しい。その髪も白く、整った顔立ちを際だたせる。この女性が国を裏切ろうとしたなどと、言われても信じられない。
「兵士が個人の信念で動けば、それはもはや暴徒と同義」
 その唇が紡ぐ理論をぼんやりと聞き流しながら、取り調べを行っている兵士は目の前の女性に見とれる。貴族の血を引く高貴な彼女を罰するには様々な制約が多く、実質、この屋敷に幽閉されることになるだろう。そして彼女が指揮していた隊はもはや跡形もない。その構成員の多くは銃殺、技能と引き替えに特赦となった者もいるらしいが、『人間』として扱われているかは保証できない。それが国家を維持する上で必要な措置だ。そして彼女もそれを知っている。
「だが、知っているか? 先駆者は破壊者と同義であり、救世者は狭義の破壊者だ。お前たちが屠ったものは、いつか亡霊となってこの国を呪うだろうな」
 自分こそが吹雪に佇む魔女のようだというのに、彼女はそう言って艶然と笑うのだ。
 白薔薇と呼ばれた女の呪いを男が、この国が理解する日は、永久にこない。

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●オズウェルBAD後
 アレック×エリカっぽいが悲恋つーかなんつーか雰囲気モノ

 彼女は狂っているのかもしれない。
「どうして生きてるんだろう」
 空を見つめて、その青い、ガラス玉のような目を細めて彼は呟く。それに、目の前の少女が微笑んで応える。
「そうするしかないからですよ」
 そうだ、彼女は生き生きと応える。だって彼女は『生きている』から。生きて行かなくてはいけないから。それが、自分を守ってくれた男が残した呪言だから。
「私も貴方も、ただ、生きなくちゃいけない」
 この世界になにもなくても彼女はここから逃げ出せない。その道はとうの昔に封じられている。無邪気なままに、エゴのままに彼女の『正』を封じた者はすでにその道を抜けここでない世に行ってしまった。だから彼女は選んで墜ちた、残された空の向こうに。そこにいたのは折れた英雄であり、つまり彼女は彼に出会ってしまった。
 世の中とは本当によくできている。
「ねえ、アレックさん。知っていますよね?」
 差し伸べられた小さな手を取って、彼は笑う。この手を引いていくはずだった温もりはとうに砕けて消えてしまった。そしてもし彼が『生きていれば』、その温もりは今も彼女と共にあったかもしれない。
 可能性とは常にゼロではない。だがそんなことは関係なく、この世界をもう一度やり直すためにすべてをゼロに戻せるのならば、彼女はそのスイッチを押すまでもなく破壊するだろう。
 なぜなら。
「知ってるよ、エリカ」
 そう言って彼女を抱きしめる彼の歪みが、普遍に罪を補完するからだ。

 本当に、この世界はよくできている。

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