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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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真・女神転生if... SS
秋都、雪都の二人が迎えた、軽高事件・終幕

『貴方にお話したいことがあります』

『俺はただ、人、探してる。
 同じ顔してる。妹なんだけど』

『ここで、何してる?』
『少し考えごとをしていました』
『答え出たのか? 何が起こったのか』
『……ええ』
『教えてくれと言ったら、怒るか?』
『いいえ。時が来たらばお答えできますが。
 お願いがあります。私と一緒に来てくれませんか?』

『……じゃあ一緒に、探しに行こう。
 何か、探しているんだろ?』

『私は赤根沢玲子と申します。よろしくお願いします、紬原……』

 

「秋都!」
 はっと目を開けると、そこに、自分がいた。
 そんなはずはない、と、秋都はすぐに自分の迷いを否定する。
「雪都、か?」
「大丈夫? 秋都、わかる?」
 全てが、辺りを包む赤い光の中に浮かび上っていた。しゃがみこんで肩に手を置き、こちらを見る心配そうな顔とゴーグルに押さえつけられた朱を帯びた髪。その向こうには、壁に寄りかかってへたり込んでいた秋都の、その真上にある窓から指す夕日に照らされた上下する階段がある。秋都が数時間前に通りすぎた、『魔神皇』の精神世界に通じていた階段の踊り場なのだろう。
 最初の目的だった、探していた雪都のその姿をようやく目の前にして、秋都はどう言っていいのかもわからずにただ手を伸ばそうとした。が、それよりも早く雪都の手が、乱暴に秋都の頬をこすった。
「秋都、泣いてるよ? どうしたの? 学校、元に戻ったよ。なのになんで泣いてるの?」
「……お前も、泣いてる」
 とたんに、じんわりとにじんでいた程度だった涙が、堰を切ったように雪都の瞳からポロポロとこぼれ出した。しかしその表情は先ほどからどこか呆然としたままで、かくんと一回うなづいてから、秋都の首に手を回しその肩口に顔を押しつける。
「あのね、アキちゃん」
 その仕草はひどく懐かしいもので、そしてその呼び名は、一体何年ぶりに聞いたのかわからなかった。ああ、ほとんど息に近い返答を返した秋都が雪都の頭に頬を寄せる。……この仕草も、何年振りなのだろう。
「アキラ……宮本明君がね、悪魔になっちゃって、それでね私のために向こうに残っちゃったの。でね、私一人こっちにやっといて、さっさと忘れろって言うの。そんなのひどいよね。私、絶対に忘れてやらないよ。忘れてやんないんだよ」
 雪都らしくない、感情を廃した声でひたすら淡々と綴られた言葉は、おおよそすぐには信じ難いことだった。秋都も学校屈指の問題児である宮本明のことは知っていたが、何故雪都がその宮本と行動を共にしていたのか、そして、聞き間違いでないならば、その宮本が何故悪魔になったというのだろうか。
 が、今はそれは些細な疑問でしかない。
「それでもいいよね、アキちゃん」
 それは、確実に二人の間に存在するものがあるから。それはもう遠い頃、……目に見える世界全てが、産まれた時から隣にいた二人だけのものだった幼いあの頃から。今と同じ様に活発だったけど今よりもずっと小さかった雪都はいつも、こうやって秋都の傍にいた。秋都も同じ様に小さかったから、その雪都に支えてもらっていた。―それは忘れられないのではなく、すがるべきでもない繋がり。
「……そうか、そうだな、ユキ」
「アキちゃんも、そうなの?」
「ああ……」
 何を、とは尋ねなかった。その声音が、大きな後悔と染み入るまでの静かな怒りに満ちていたから。雪都は、そこまで感情のこもった兄の声を久しぶりに聞いた。それで十分だ。何をなくしたのかは問題じゃない。秋都がそれについて思うことが、大事なのだ。
 ただ小さく首を傾げ、雪都はつぶやく。
「悲しいね」
「ああ、凄く」
 そこで二人は口を閉ざし、同じリズムを刻んでいるのかもしれない鼓動のままに、小さく息を吐いた。そして、秋都が雪都から頬を離すと、
「なあ、雪都?」
「魔界に行かないか、でしょ?」
 きっぱりと言い切った雪都が体を起こすと、もう、そこには涙の跡以外には泣いていた面影などなかった。その雪都に返事を返さずに、秋都は自分のアームターミナルをなでる。それから、八幡教諭がたまたま二台作っていたという、全く同じタイプの雪都のそれに視線を移す。……その中に収められているものすら、同じ、悪魔召喚プログラム。
 この世にまだ、方法が、残されている証。そしてそれは二人に同じに与えられた。
「会いたいから、会いに行こう。お前は宮本に、俺は……玲子に。まだ、道はあるはずだよ、な」
「うん。これと……咲姉さんのチカラがあれば、私達だってきっと魔界に行けるよ」
 双子は、そこで小さくうなづきあった。同じ瞳に、違う意思を宿して、同じ明日を見据えるままに。
「もう一回、会いたい、からな」
「絶対に、もう一回会うんだから」


 その行き先が、いずれ、たがうものであっても、彼らは決してためらわない。

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