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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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九龍妖魔学園紀 SS
12st午後。レリック・ドーン急襲直後の葉佩。
葉佩→八千穂 前提


 なんだこれは、なんだこれは。
 頭の中をぐるぐるとめぐるのはそれだけ。背後で何事か得意そうに語る物部の声など耳に入っていなかった。
 夕焼け空から舞い降りるヘリ、爆音、砂埃。霞む東京のビル群。見慣れないものが多すぎる。
 降り立ったヘリからバラバラと人が降りてくる。黒一色のプロテクトアーマーは『レリック・ドーン』急襲部隊の証だ。ロゼッタの資料でそれを知っている葉佩は、しかし、全く違う単語を口から漏らした。

「……やっち」
 ダメだ、やっちはこんなところにいちゃダメなんだ。
 学校は。
 ここは。
 八千穂明日香は。
「やっち!」

 その直後のことを良く覚えていない。
 気がつけば、校舎内を音もなく疾走している自分がいることに、葉佩は気がつく。右手に血がついているところを見ると、物部を殴り倒してきたのかもしれない。
 いや、物部だけじゃない。
「……どけ」
 突如、階段から走り出してきたプロテクトアーマーも、同じだ。『邪魔をするのならこれを排除せよ排除だ排除』と脳がケタケタ笑い出す。
「出て、くるなぁっ!」
 対プロテクトアーマー戦のマニュアルはロゼッタの施設で叩き込まれている。それは、派遣される先々でいつ『レリック・ドーン』の特殊部隊と遭遇するかわからないからだ。
「な、っ!」
 バカ正直に飛び掛ってくるとは思っていなかったのだろう。兵士はあわてて機関銃を構えるが、時すでに遅し。その銃身の内、懐にまで葉佩の進入を許していた。こうなると銃などただの鉄の棒だ。
 思考よりも身体が先に動いている。腰に差していた護身用のサバイバルナイフは、いつの間にか葉佩の手の中に移動していた。そういえば、このナイフを持ち歩くきっかけになったのは物部だったことに思い至るも、行動は迅速に続く。
 肘の間接部を狙って、的確に愛用のサバイバルナイフを滑り込ませる。レリック・ドーンのプロテクトアーマーはあくまで補助、全身を覆う防具ではない。一対一での完璧な防御のためのものではないのだ。
「ぎゃああ!」
 だから斥候役に立たされた雑魚など、どうとでもなる。それを知っていれば、ここまで脆い。
 ナイフを、アーマーの切れ目に沿って、流れるままに振りぬく。同時に素人じみた悲鳴を上げた兵士を、反動のまま相手を蹴り飛ばし転ばせた。同時にガゴンと葉佩の後方になにかが落ちて転がったが、見向きもしない。十中八九、この男の左腕の一部だったモノだろうから。
 ただ、めまいがした。
 血が撒き散らされた廊下に。
「ここは学校なのに、ここは学校なのになんで」
 救われたいのは、俺だけなのに、なんで。

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