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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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 連作に絡んでいる感じの小ネタ創作文。
 某所で考えついたネタ。タリズマンは出自の関係で賛美歌いけるが歌うこと自体が好きじゃない。シャムロックは、なにか作業をしていると鼻歌を歌ったりしそうだなという妄想から来た話。恐らくまだケセド島にいる頃、上陸作戦直前くらいじゃないかなーとか。勢いで書いているので細かいところはご容赦。




 ふと聞こえてきた旋律にタリズマンは手を止める。それがどこから生まれ流れてくるものなのかは、考えずとも明白だ。聞き慣れた声よりも僅かに高いテノールのそれは、彼女の相棒の声に他ならないのだから。それにしても、どうして歌っているのだろう。そう不思議に思いまじまじと傍らを見上げたタリズマンの視線に気がついたことで旋律は途切れ、
「どうした?」
 代わりにそう問いかけを聞かされて、彼女はいつものようにかくりと首を傾ける。
「それはこっちのセリフ。なんで歌ってたの?」
 指摘されて、ああ、とシャムロックは照れくさそうに手で口を押さえた。
「クセでね。気が乗ったりしてくると鼻歌が出てくるんだ」
「へー。なんか聞いたことある歌だったけど有名な曲?」
「いや、娘の好きな歌だよ。少し前に流行っていたから君も知ってたんだろう」
「あー! そっか、そうそう、ラジオでよく流れてたやつか」
「気に障ったかい?」
「別にそうじゃないけど」
 口ではそう言いつつもタリズマンの表情はスッキリしない。明らかになにか言いたげな様子に、シャムロックは心で首を傾げる。彼女は思ったことはわりと素直に口に出すタイプなのだ。となれば、もしかして。そう思い至り彼は彼女の言葉をゆっくりと繰り返す。
「けど、なんだ?」
「……私、そういうのしたことないから、よくわからなくて」
「なにがわからないんだ?」
「んー……」
 こん、こん、と胸の前で左右の拳を付き合わせながらタリズマンは天を仰ぐ。何度目かに打ち合わさった拳はそのまま動かなくなり、すいと彼女の視線が下がった。
「シャムロックは歌、好きなんだ」
「なんだろうな。あまり意識したことはないけど、楽しくなったりすると出てくるから」
「じゃあ、それは誰のために歌うんだ?」
 ぽすん、と両の拳が彼女の腿へ落ちる。行儀良く揃えられた手からシャムロックに視線を流しなおそう問いかけてくる、純粋な疑問として。
 少なくとも彼女にとってはそうだった。その身を預かり育ててくれた場所では、奏でられる音楽も歌い上げる言葉もすべて、この世界を作りたもうた御方のためにあった。でも、だけど、その大いなる存在は、無慈悲にこの世界を試し続けている。果てなき空を砕き、その欠片を数多の人間に注ぎ、なおも続いてゆく明日。その前にひれ伏し歌いながら幼き日に彼女は思った。この地を這う者たちの救済を求める声など、かの御方の耳には届かないのか。
「歌ってそういうものだろ? 誰かを讃えるために歌うんだろ?」
「そういう歌もあるだろうけど、僕は誰かのためにって考えたことはないな」
 そう言いながらシャムロックは肩をすくめて笑う。
「第一、さっきの歌は娘が聞いてるのを覚えてしまったって程度なんだから」
 そっか、とうなずいてタリズマンは手を頭の後ろに回してまた空を見上げて目を細めた。楽しいと歌うのか、と再度呟き、そしてそのまま、また相棒に問いかける。
「じゃあ、シャムロックが好きな歌は?」
「そうだな……。ああ、The Journey Homeは好きだよ」
 あ、それなら知ってる、とタリズマンは頷く。恐らく、あの2010年という年を境にこの世界でもっとも有名なもののひとつになった曲であり、示されたひとつの答えであるのかもしれない。だが、彼女はその歌を歌ったことなどなかったし、その内容を意識したこともなかった。
「~~~~」
 だが、いま隣で密やかに紡がれていく言葉の連なりは耳に心地良く、彼女は目を閉じて聞き入る。彼女のためではなく誰のためでもない、その旋律を。
 そしてタリズマンは知らない。シャムロックが、あえて彼女も知っていそうな曲名をあげたことも。

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