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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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 連作とはまったく無関係の小ネタ創作文。
 弊サイトの設定で恋愛っぽい話をやるとしたらこうなるんじゃないかなぁ、というネタ。カップリング的にはゴーストアイとタリズマンで、ちょこっとシャムロックも登場。勢いで書いてるので細かいところはご容赦。



「なにをふて腐れている」
 数分間たっぷり迷って選択したにしてはあまりにも凡庸な台詞に、ゴーストアイは若干の憂鬱さを感じた。が、相手にとってはそうでもなかったのか、自身にかけられた声にがばっと身を起こして相手を凝視して数秒、いつもの、気がつけば敗残兵の寄せ集めではなくなったこの軍の中心にあるものとはまったく違っている表情を見せて、
「ふて腐れてるわけじゃないよ。ただ、またがっかりさせたなって思ってるだけ」
「それをふて腐れているというのではないか?」
 重ねられた指摘に、タリズマンは今度は迷子の子どものような顔になる。それはまったく以て軍人らしくなく、そして25歳という年齢にもふさわしくもなくゴーストアイをも彼女同様に惑わせるのだが、立場上常に平静さを求められる彼は自身への戒めを解くことができず仏頂面と言ってもいい表情でタリズマンを見つめることしかできない。
 そのまま見つめ合ったのは数秒、先に視線をそらしたのはタリズマンでまたベタっと机に伏せった。それが彼女の、疲れたときや落ち込んでいる際お決まりのポーズであることは、ゴーストアイも薄々は知っている。その程度のことがわかるくらいには付き合いも長くなったのだ。そして今回の落ち込みの理由が、彼女の容姿―明らかにエメリア系ではなく異国の人間とわかるそれにあるのだろうことも、先ほどの“ガルーダ1”と報道関係者との会談に同席していた彼には明白だった。
「私がシャムロックとかラナーみたいな見た目だったら、みんな喜んだのかなぁ」
「みんな、とはなんだ。この国の人間全てか? だとしたらとんだ勘違いだ」
「え? 勘違い?」
「まず単純な結果だけを見るのならば、“ガルーダ1”の戦果には文句のつけようがない。それどころか、“ガルーダ1”の行動に付随する事柄は全てにおいてエメリア軍にプラスに働く。しかも戦場に限らずだ。つまり“ガルーダ1”の存在はエメリアにおいて無視できない要素となっていると言っても過言ではない。これは動かぬ事実、知らないとは言わせん」
 そこまで一気に並べ立ててみせてから、ゴーストアイはちらりと相手の反応を伺う。やはり机に臥せったまま、顔だけを彼のほうに向けていたタリズマンの表情がみるみる神妙なものになり、すくりと身を起こしてその場に座り直した。
「申し訳ありません」
 凛とした表情と声に、ゴーストアイは満足すると同時に自身のどこかが疼くのを感じる。もちろん、“エース”を諫めたのだから彼女の対応にミスはなく己の行為に後ろめたさもないのだが、彼の中に『なにかが足りないではないか』と問いかけてくる、もう一人の彼がいるのだ。
「……少なくとも管制としては、コクピットに乗っている人間の容姿など気にしたところでなんの足しにならないのだが」
 だから、そんな自身が勝手に口を動かしてそう付け足してしまったことは、ゴーストアイにとってはあってはならない自己の暴走に近い失態だった。言った本人にすら思わぬものとなったその言葉に、目の前にある彼をそうさせる存在は身を竦めるような仕草をしてうつむく。ぎゅっとその手を握りしめてなにかをこらえるようにして……ガタン、と椅子が大きな音を立てた。
「ありがとうございます、少佐!」
 ゴーストアイはそもそも文学的な表現などとは縁遠い。軍人に、しかも指揮官クラスである彼に求められるのは情緒ではなく合理なのだから。しかしそんな彼でも、今のタリズマンの、敬礼というポーズにも言っている台詞にも似合っていない表情を『笑顔』の一言で片付ける気にはなれないのだ。……花開くような、素朴だがそんな表現がふさわしい。
「礼を言われる筋合いはない」
「言いたくなったんだよ、私の勝手だから。それじゃ!」
 そんなことを考えているのも失態なのか、それとも人間として当たり前の感情なのか。それに対する判断を下すことがないように冷厳な言葉で体面を保つゴーストアイに構わず、タリズマンは上げた手でコツンと自身の額を打ってから、くるりと彼に背を向け飛び出していってしまった。止める間もなくそれを見送ったゴーストアイは、妙な疲労感と共に今まで彼女が座っていた椅子に腰を下ろして目頭を抑え、大きなため息を吐く。と、そこにすたすたと足音が近づいてきた。
「罪な男だな、君も」
 それがガルーダのもう一翼だということは声でわかった。だからゴーストアイは顔を上げないまま答える。
「見ていたのか?」
「いや、そこでタリズマンとすれ違った。やけにはしゃいでいて、ちょっと落ち着くまで外を走ってくるって行ってしまって……どうやら原因は君みたいだな?」
「……なぜ、そう思う」
「彼女はとても素直だから、だよ。楽しければ笑うし悔しければ涙を流せる、そういうひとだ」
 タリズマンが走り去っていったほうを見つつの思わせぶりなそれは、見る人間が見ればシャムロックがなにを言いたいのか露骨に透けているものだった。掌の影で自らの視界を覆い隠したゴーストアイにそれは見えていなかったが、しかし、繰り広げられているだろう光景が容易に想像できてしまって、またため息が漏れる。
「知っている。飛び方を見ていればわかる」
「だろうな」
「……シャムロック」
「なんだ?」
「ここだけの話、だが。……どう扱ったらいいのか、わからんのだ」
 わざわざ前置きをしているものの、無論、シャムロックに周囲にふれて回る気などないとゴーストアイはわかっている。顔を覆ったままの掌、その目的がいつしか、わずかに赤くなった目尻をシャムロックから隠すことにすり替わっているのもまた、すでに相手には筒抜けだろうとことも、
「はは、なるほど。お互いに空の上とは勝手が違うわけか」
 そして、らしさも覇気の欠片もない戸惑いの声に、彼が微笑を浮かべているのだろうことも。
 

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