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ゲーム寄りのよろず二次創作ブログ
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真・女神転生if... 妄想メモ的文章
ヒーローとユミ

 カチャ、カチャという金属音が静かな保健室に響く。弾倉に弾丸を一発一発込めてゆく音。慣れているのか手つきに迷いはない。丸椅子に座り真剣な表情でそれを鳴らしていた那賀は、ふっと顔を上げる。
「ん? 起きたんか?」
「おはよ」
「おはよーさん。なんや、これ終わったらイタズラでもしたろ思てたわ」
「そんな度胸、アンタにないでしょ?」
「うわ、ひっどいなぁ。めっちゃ紳士やんか俺」
「紳士はそんなセリフすら口にしないのよ」
「さいですか。うーん、そりゃ俺には無理やな」
 と言いつつも、相手が身を起こそうとするとサッと視線を外して、また手に持った弾倉に弾を込める作業を再開する。相手―ユミはゴソゴソとベッドから這い出し、ゆっくりと床に身体を下ろした。トンと足をつけて、確かに自分であることを確認し噛み締める、まるで儀式のように。そして備え付けの机の上にあった、休むのには邪魔なので外しておいた自分の持ち物を身に付けながら、
「ねえ、人魚姫って知ってるよね」
「はあ?」
「童話の『人魚姫』。人間になった人魚の話」
 弾を込め終えて手を止めた那賀に、ユミは、上手く言えないんだけどさと前置きしてから続ける。
「初めて自分の足で地面に立ったとき、人魚姫はきっとそれを奇妙だと思ったはずよね。でも、彼女にはそれを『奇妙だ』と伝える手段と相手が居なかったわけじゃない。それはね、多分もう奇妙なことじゃなくなるんじゃないかって」
「うん? つまり?」
「アタシ達人間は、それに当たり前に付き合うわけじゃない。だから、彼女の苦悩なんてわかってあげられないってこと」
 ブレザーを羽織れば準備は完了だ。ユミが那賀に振り返り、すたすたと近づいていく。と、それまで考え込むように動かなかったその手がくるりと動き、弄んでいた弾倉を銃に押し込む。
「声ん出えへんゆうて他者とコミュニケーション出来ないちゅうんは、差別やってか?」
「ああ、それに近いかな」
「で、終いにゃ泡んなって消えてく」
「そう、ね。泡になって消えるしかなかった」
「なんや哲学的やな」
「そうでもないわよ」
 首をすくめたユミに、那賀がホレとばかりにそっけなく拳銃を渡した。受け取ってスライドを引き遊底を開くと、弾倉の頭に9mmパラベラム弾が見える。そのまま戻せば、初弾が装填された音がいやに大きく響いた。
「予備に持っとき。最高10発しか撃てへんけど、それ使う時はその程度で十分やろ」
「容赦ないわね、その言い方」
「ここやと泡んなっても逃げられへんからな。王子様、ワガママ放題やから」
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